医療コラム
「虫刺されについて」BY久保先生
みなさんこんにちわ、さくらクリニックの医師の久保です。
だいぶハノイでも暑い日が増えてきました。もちろん天気が良かったり悪かったり、気温が高かったり低かったり変動はありますが、徐々に本格化する夏の時期になりました。こうなってくると困る体の問題…熱中症、疲労、夏風邪、COVID…いろいろあると思いますが、今回はずばり「虫」にフォーカスしようと思います。
・虫刺されについて
虫刺されと言われて、まず何より一番気を付けていただかなくてはいけない虫、それはもちろん「蚊」です。世界で最も人類を死に至らしめる生き物は、猛獣でもスズメバチでも毒蛇でも人間(戦争)でもありません、蚊です。
蚊で人間が亡くなる理由はマラリア・デング熱などが良く知られていますが、ベトナムにおいてもこの2つによる死亡や入院はとても多いです。デング熱については数年前に日本でも発症例がありましたのでご記憶に新しいかもしれませんが、ベトナムではたくさん発症例がありますので十分ご注意ください。
マラリアもデング熱も発熱したり、湿疹が生じたり、筋肉痛が起きたりと、素人ではインフルエンザやCOVIDと見分けがつかないこともありますが、これら蚊にさされる病気の共通点は「予防は最大の防御」であるということです。つまり蚊よけしましょう。正直刺されてからでは何ともしがたいのがこの蚊が媒介する病気なのです。
一般的な虫よけの薬は「DEET」という蚊やダニなどに対する忌避成分が含まれており、この濃度が高いほうが虫よけの効果は高い(強さを表しているのではなく持続時間が長いために有効性が高い)といわれています。日本では10%~30%の濃度のものが多いですが、ベトナムではそれ以上の濃度のものも売られていると思います。なお、スプレータイプ、塗るタイプとありますが、塗り込んで使うほうが効果は高いといわれています。
このDEETはわずかに毒性があったり、アレルギー反応を起こしたりすることがあるため、小さなお子さんには注意が必要です。乳児(6か月未満)のお子さんへの使用は控えるべきとされており、6か月以上2歳未満の子供は1日1回、濃度も10%のものを使用することが望ましいといわれています。このあたりは使用したからと言っていきなり毒性によって悩まされたりするわけではありませんし、国によっても判断基準が違うため、あくまでも目安としてお考え下さい。(例として米国小児科学会は2か月以上のお子さんからDEETは使用して差し支えないと明言しています。)
小児で使用できる薬剤として、イカルジンという薬品もあるのですが、ベトナムでは私は見たことはありません。子供用のDEETの含まれていない虫よけもありますが、肌に合わないあるいは心配ということであれば、日系のショッピングモールなどで日本製品を購入したほうが無難かもしれません。大人に関しては、有効成分はDEETであることがほとんどですので、ローカルの薬局で購入いただいても内容は同じです。
そのほかにも、メッシュ素材のものを着て外に出たり、なるべく腕や足を露出しないというのも効果があります。もちろん完璧に虫刺されを防ぐことは難しいと思いますが、可能な限り刺されないような工夫が大事です。
蚊に刺されて生じる疾患はたくさんありますが、対症療法しか治療方法がないデング熱のような疾患も多いため、何より刺されないことが大事です!蚊以外の虫も同様です。これからの時期虫が増えてくると思いますが、多少意識するだけで蚊にさされるのはだいぶ防ぐことができます。特にお子様では悩ましいところではありますが、予防が最大の治療であることを常に覚えていてください。
なお、Twitterでは、このほかにもヤケドムシについても話しています。ぜひのぞいてみてください。
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written by Dr Kubo2022.5.12