医療コラム
インフルエンザの話:第一回目:診断
このコラムでは、医学の身近な情報をできるだけ平易な言葉を用いて解説していきたいと思っています。わかりやすさを追求するため、厳密に言うと多少事実と異なる内容もありますが、ちょっとした読み物としてお暇なときに見て頂ければ幸甚に存じます。さて今回は、いよいよ流行期にさしかかっているインフルエンザのお話です。一般の方、また場合によっては医療関係者でも誤解しているインフルエンザの常識について、(1)診断、(2)予防、(3)治療の3回に分けてお話ししたいと思います。
第1回目は診断に関してです。
× 熱がない=インフルエンザではない
インフルエンザと診断された患者のうち、熱、寒気、発汗を訴えた患者は71%という研究報告があります。つまり10人中3人は発熱がない、ということになります。ちなみに一番多い症状は咳で92%、続いて痰(88%)、倦怠感(83%)、鼻水(76%)となっています。
× 診断には迅速検査が必要
インフルエンザの診断で最も重要なのは問診です。どのような症状か、周りに感染者がいたか、もともとの持病があるか、ワクチンを接種しているか、などの情報を元に診断します。迅速検査はあくまでも診断の補助的手段であり、問診の時点で感染している可能性が高いと医師が判断した場合には、検査なしで診断を確定することもあります。但し、患者様から検査の希望がある場合、職場や学校などから検査を受けるように言われている場合には、お申し出頂ければ検査を行います。
× 症状は全くないが、検査を受けてインフルエンザでないことをはっきりさせたい
はっきりさせたいお気持ちはわかりますが、症状が全くない、または軽微な場合に検査を行うことはお勧めしません。病院のどんな検査でもそうですが、100%正しい結果が出る検査は存在しません。感染しているのに陰性になる、感染していないのに陽性になる、ということは一定の確率で起こりえます。上述の通り、まずは問診で可能性を高めて、その上で必要に応じて検査を行う、というのが望ましいと考えます。
× 症状がいつもの風邪と違う、症状が強い
風邪とインフルエンザの違いを症状のみで見分けることは一般的に不可能です。風邪は様々な種類のウイルスが引き起こす呼吸器症状の総称であり、出現する症状も様々で、そのウイルスに対する体の抵抗力(免疫)の状態によって症状の程度は異なります。逆にインフルエンザでは、不顕性感染といって感染していても症状が全く出ないこともありえます。ワクチン(=特定のウイルスに対する免疫を活性化している)を接種していると、インフルエンザに感染しても症状が軽くすむ、または感染したことにさえ気づかないことがあるのはこのためです。
次回はインフルエンザの予防にまつわるお話を取り上げる予定です。