医療コラム
インフルエンザの話(第二回目)予防
× インフルエンザワクチンは打たない方がいい。
巷では、インフルエンザワクチンは効かない、却って副作用が危険などとして、打たないことを勧めている医師がいます。彼らは彼らなりに根拠を持って持論を展開しており、もしかしたらそれは真実なのかもしれません。
ただ、これは私個人の意見ですが、本来医師は個々人の信念や経験のみにとらわれず、医学知識や研究結果などを十分に加味した上で診療を行うべきだと考えます。これはEvidence Based Medicine (EBM) といい、医者が変わるたびに診断や治療も変わって患者が不利益を被らないようにするための概念として、最近の医学界で重視されている考え方です。インフルエンザのような感染症に関しては、米国Center for Disease Control and prevention (CDC)が膨大なデータや研究論文、専門家の意見をもとに勧告を出しており、事実それがGlobal Standardとして各国の学会等でも採用されているため、基本的にはこれに則って診療を行っていくべきと考えます。
CDCは、” An annual seasonal flu vaccine is the best way to reduce your risk of getting sick with seasonal flu and spreading it to others.”(インフルエンザワクチンはインフルエンザにかかって他の人にうつすリスクを減らす最良の方法である)として、インフルエンザワクチンの接種を奨励しています。
× ワクチンを打っていたのに、インフルエンザにかかってしまった。
実はインフルエンザワクチンはそれほどできのいいワクチンではありません。症状が軽くなる、または入院が必要なほどの重症化を防ぐことに関しては6-7割程度の効果がありますが、かかることを防ぐ効果はあまり高くありません。ただ、「重症化を防げる」という点だけを見ても、ワクチン接種の意義は十分にあると思うのですがいかがでしょうか?
× 卵アレルギーがあるのでワクチンを打てない。
インフルエンザワクチンはウイルス増殖に発育鶏卵が使用されているため、卵の成分が含まれています。しかし、精製の技術の進歩で含有成分量はごく微量となっており、アレルギーがあっても接種できる場合が多いです。卵アレルギーの症状が強い場合は別途ご相談ください。
△ 子供が生後6ヶ月を過ぎたので、ワクチンを打ったほうがいい。
インフルエンザワクチンの接種可能年齢は生後6ヶ月からです。ただし、以下の点から1歳未満のお子様の接種は積極的にはお勧めしていません。
(1) お子様の年齢が小さければ小さいほど、ワクチンの効果は低いというデータがある。
(2) 離乳食の進み具合によっては、お子様に卵アレルギーがあるかがまだわかっていない。
(3) 1歳未満の乳児はインフルエンザにかかっても軽症ですむことが多い(インフルエンザが原因の脳症は1歳以上の小児に多い)。
基本的には、同居のご家族がワクチンを打ってお子様への感染を防ぐという対応が望ましいと考えますが、もちろん接種は可能ですので、ご希望の場合はお申し付けください。
次回は第3回目、治療についてのお話です。