医療コラム
『“傷”のお話』
まずお知らせです。当クリニックビル6階の会議室をお貸ししています。営利目的でなければ原則無料でお使い頂けます。テーブルや椅子、ホワイトボード、プロジェクターなどの準備も可能です。これまで、書道教室、ヨガ教室、各種グループ・サークルの月例集会、ガレッジセールなどでご利用頂いています。まずお電話(024-3718-1000)でお問い合わせください。
さて、今回は「切り傷・すりむき傷」のお話です。私自身がまだ子供だった頃はキズの手当てというとこんな感じでした。
(1)オキシドールやマキロンなどで消毒し、
(2)バンドエイドを貼ったりガーゼで覆い、
(3)バンドエイドをはがすたびにベロンと皮膚が剥けてを繰り返し、
(4)1週間後くらいにはかさぶたになってかゆくなり、
(5)かさぶたが取れてあとが残って治癒。
しかし、今はこの処置は時代遅れになりました。最近はこんな感じです。
(1)オキシドールやマキロンなどで消毒し、
→消毒は不要、キズを水でしっかり洗い、
(2)バンドエイドを貼ったりガーゼで覆い、
→「創傷被覆材」という特殊なテープで覆い、
(3)バンドエイドをはがすたびにベロンと皮膚が剥けてを繰り返し、
→創傷被覆材は数日貼りっぱなしでOK
(4)1週間後くらいにはかさぶたになってかゆくなり、
→かさぶたはできずに治っていき、
(5)かさぶたが取れてあとが残って治癒。
→あとを残さずに治癒。
この治療法の一番のキモは、「キズを乾かさない」ことにあり、「湿潤療法」と言われます。キズができてしばらくすると出てくるジュクジュクはキズをきれいに治すための成分であり、それを拭いたりガーゼで吸収させてはいけなかったのです。
なお創傷被覆材ですが、日本の薬局などでよく見かけるのは「キズパワーパッド」でしょうか。ただ結構いい値段がしますので、百戦錬磨の子供たちに頻用するにはちょっと勇気がいります。とにかくキズを乾かさなければいいので、見た目さえ気にしなければ、料理に使うラップで覆って周囲をテープで止めてもかまいません。さすがにラップはちょっと、という方は、安い創傷被覆材もいろいろありますので、お問い合わせ頂ければご紹介致します。
最後に、キズといえばなんといっても破傷風に注意が必要です。発症すると顔面の筋肉が緊張し、口を開けられないなどの症状が出ます。破傷風菌はいくら消毒をしても死滅させることは難しく、上記の通りキズを水で洗い流して物理的に排除する必要があります。そして、最も効果的な予防は予防接種です。お子様はほとんどの方が予防接種を受けているので心配ありませんが、大人の方では過去の予防接種の効果が切れている場合があります。特に30代以上の方はすでに免疫がない可能性がありますので、再接種をお勧めしています。