医療コラム
久保先生からのご挨拶&医療コラム「尿検査について」(2021年11月26日更新)
皆様はじめまして!
11月に東京よりやってまいりました久保と申します。夏から勤務されている黒川先生とともに、これからさくらクリニックハノイは日本人医師2人体制となってやっていくこととなりました。どうぞよろしくお願いいたします。
私は13年、日本で内科医として特に腎臓病を専門として働いてきました。腎臓病は子供や若い方でも生じる病気もありますが、高血圧・糖尿病をはじめ様々な病気を合併することがとても多く、多様な患者さんを拝見してきました。日本から離れた場所での生活では様々な健康の不安が出てくると思います。日本とは違う環境であり完璧な治療をすることは難しいこともありますが、それでもお役に立てることはたくさんあると思います。お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。また、小学生の子供たちもつれて家族でやってきています。小児科は専門ではありませんので対応が難しい時はあるかしれませんが、同じ子を持つ親としてお力になれればと思っています。
さて今回は私の専門でもあって、健康診断で皆様必ずやったことのある「尿検査」について簡単にご説明します。
人生で尿検査をしたことない方はまずいないと思いますが、あの検査は実にいろいろなことを我々に教えてくれています。そもそも尿はすべて腎臓という臓器で作られています。腎臓で作られたおしっこが、尿管といわれる管を通って膀胱で貯まり、尿道と呼ばれるところから体外へ出ていきます。
おしっこの異常には様々種類があるのですが、大きく分けて
・たんぱく質が混ざって出てくる、たんぱく尿
・血が混ざって出てくる、血尿
が最もよく知られている尿の異常で、かつ最もよく見る異常です。
たんぱく尿が見られた場合はそれはほぼ必ず腎臓に異常があることの証です。腎臓は肝臓と並び沈黙の臓器といわれるほど、気が付かないうちに悪くなることが多々あります。末期状態になるまで無症状のことが多いです。ただし、腎臓が悪いとほとんどの場合尿に異常があらわれ、たんぱく尿は「腎臓が悪い時にしか原則として出てこない」ものです。したがってその性質を利用し腎臓病の早期発見に用いられています。簡便に検査することができる上に、安く、大規模に、かつ負担なくできる検査として尿検査は今も世界中で広く行われている理由がここにあります。
これとは対照的に、血尿は「腎臓から尿道までどこで血が出ても血尿」として判断されます。つまり腎臓が悪くても、膀胱が悪くても血尿になるため、血尿が出ただけでは、腎臓が悪いのか膀胱が悪いのかが区別がつきません。
血尿は身近な病気ですと、膀胱炎・尿道炎などでも見られますし、慢性腎炎(IgA腎症など)、膀胱がんといった様々な病気でも出現します。
このようにたんぱく尿と同じく、様々な病気の発見につながるものであり、また1度検査をして異常が出ても、患者さんは採血などと違って簡単に再検査もできるため、非常に有用な検査なのです。
注意としては、女性の場合は、月経中に検査するとほとんどの場合目に見えない血尿(顕微的血尿)としてカウントされることが多いことから、月経中に尿検査をすることは基本的には避けて頂くことが望ましいです。
このほかにもいろんなことを教えてくれる尿検査。ぜひめんどくさがらずに健診含めて1年に1回は受けるようにしてみてくださいね。