医療コラム
「夏休み!Bệnh Sởi特集」
コロナもいわゆる「カゼ」扱いとなり、やっと自由気ままに遊びに行けるようになりました。夏休みに向けて国内外の旅行者数が増加することが予想されています。
さて、楽しい雰囲気のタイトルを付けてみましたが、今日は「はしか(麻疹)」のお話です。ベトナム語でBệnh Sởiと言うんだそうです。
今年の4月下旬以降、日本では麻疹患者さんの発生が数例報告されています。ニュースでご覧になられた方も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以降は世界的にも麻疹の流行は減少傾向となっていましたが、各国の渡航制限がなくなり人の移動が再び活発になってきていることやパンデミックの影響で麻疹ワクチン接種率が低下していることから、今後麻疹の流行が発生する可能性が懸念されています。
ベトナムでも2018年に8000人以上が感染し、WHOが中心となってワクチンキャンペーンやワクチン接種拡大計画を行っていますが、しばしば麻疹の流行がみられます。多くの国で患者数が増加しており、最近もインドやインドネシアで大規模な地域流行が確認されています。
麻疹は感染してから2週間前後に発症し、発熱、鼻水、咳やのどの痛み、結膜炎などの症状があらわれます。こういった症状が出てから数日後に全身の発疹が出現します。発疹は顔や首にかけて出始めて、身体全体に広がっていきます。麻疹は肺炎、中耳炎、心筋炎、脳炎などの合併症を起こすことがあるため注意が必要です。
はじめは風邪と区別がつかず、発疹が出て初めて麻疹であることがわかることが多いため、集団感染がおきやすいのです。
※この写真のような派手な発疹が全身に出現します
感染力が極めて強く、飛沫・接触感染だけではなく空気感染もするため、手洗いやマスクなどでの予防が難しく、免疫を持たない人が麻疹患者に接するとほぼ100%発症するといわれています。
「そうだ、打ちに行こう。」
ゴルフボールが思い浮かんだ方も、そばが思い浮かんだ方もあと少しおつきあいください。麻疹を防ぐ最も効果的な方法は予防接種です。以前は麻疹は主に子供の病気でしたが、現在日本では麻疹・風疹混合ワクチン2回定期接種となっており子供ではほとんど見られなくなりました。(1歳児、小学校就学前1年間)
日本では1978年から麻疹ワクチンが定期接種に組み入れられていますが、2回接種となったのは2006年以降です。30代以上の人の多くは1回接種の方が多く、日本では30~50歳代で麻疹の免疫が低いとされています。
1回接種で十分な免疫ができていない場合、時間の経過とともに免疫が低下している場合があります。麻疹の予防接種を受けたかどうか覚えておらず、かかったことがない方は、この機会に追加接種をおすすめします。抗体検査もできますのでお気軽にご相談ください。
参考
LSAR Vol.43 p208 2022/9月号