医療コラム
「今回のCOVID-19大流行について」BY久保先生
みなさんこんにちは、さくらクリニックの医師の久保です。
COVIDが大流行しております。現場の感覚からいうと、ピークを越したような感覚がありますが、あまりにも大きな流行ですので今後どうなるかはわかりません。政府の政策もありますが、ベトナム人たちのCOVIDへの受け入れ方を見ると再び強烈に行動制限するようなことも考えづらいように思います。またワクチンの普及率・COVIDの重症化率の低さを考えてみてもおそらくベトナム人たちはすでにF0もF1も恐れていないのではないかと思う方も少なくないかもしれません。テト以降に当院にて拝見した方も、全例が軽症です。
この1ヶ月、実に多くのF0/F1患者さんたちを拝見しましたが、今のF0の流行を拝見していて、思い出す事柄があります。それは10年以上前に世界を席巻した『新型インフルエンザ』です。皆様覚えていらっしゃるでしょうか?
お若い方やお子さん方は知らない/記憶にないかもしれませんが、メキシコで発生したと思われる新型コロナウイルスは瞬く間に世界を席巻しました。当時まだ研修医として大病院の救急などの最前線にいた私は、新型インフルエンザの流行を深く記憶しています。とにかく検査して処方出しての無限ループの日々でした・・・。
【抗原検査Quick testの限界】
感染がピークだったころ、当直した日に一夜で100人近く新型インフルエンザ患者さんを検査した夜もありました。一生分の綿棒を鼻に突っ込んだと思わせるくらいの数で、とにかく作業のように診療した記憶があります。
そして当時も悩ましかったのは『陰性』の抗原検査。抗原検査というのはCOVIDでいうQuick testのこと。あの頃の抗原検査もやたらと偽陰性がやたらと多く、症状があるのに陰性だけど、次の日やったらあるいは1時間後にやったら陽性・・・というケースは1割から2割程度あったのではないかと体感では記憶しています。あの時の経験から、「抗原検査結果は決して過信してはいけない」と肝に銘じた記憶があります。
あれから10年以上たち、COVIDにおける今のハノイの流行を見ていると、この時の状況に似てきているように思います。すなわち、多くの人は軽症(酸素投与/入院を必要としない)であること、高熱・咽頭痛・咳などいわゆるきつい風邪の方が大部分、抗原テストをやったにも関わらず陰性が続き翌日再度検査したら陽性になることなど、共通点が多く増えてきたように感じています。このような検査結果と症状が解離する現象は、往々にして大流行している時に生じるものだと思います。(感度・特異度といった理論的にも、現場の体感的にも。)
【自分でやるQuick testはさらに不確実性が増す】
ベトナムでのQuick testはご自身でやることが多いと思います。そこで改めて皆さんに気を付けて頂きたいのは、「Quick testの結果を過信しないでほしい」ということです。ましてやご自身の手技はほとんどの方が正確ではありません。自分でやるのは私でも難しいです。
実に多くの方がすり抜けていると言いますか、「家でやっても陰性だったのに・・・」「昨日・おとといは陰性でしたが今日陽性になりました。昨日まで陰性だったから出勤してたんだけど・・・」という方がものすごくたくさんいらっしゃいます。また、症状が乏しいときにQuick testをやっても陰性であることは多いです。
そしてよく勘違いされる方も多いですが、PCR検査も有能ではありません。PCRもQuick testも感度が低い、すなわち偽陰性がそれなりに発生しうる検査です。手技によっても偽陰性になりやすいし、もっといえば偽陽性になることも可能性としてあるのが検査の限界でもあります。
したがって、有症状の方が検査結果が陰性だからといって家族内全員がCOVIDの症状を呈していた場合は私たちはCOVIDであると診断します。今はハノイにF0だらけですから、無症状のPCR陽性患者さんがいた場合の判断は難しいですが、もしもっと感染が落ち着いているときであれば無症状のPCR陽性者は感染者とはみなさない可能性もあります。さらにいえば、感染後や治療後のしばらく一定期間、感染力がなくともPCR陽性が持続する例があることも知られています。
我々医者たちにとって、「患者さんの症状を考えた上で検査の結果を正しいか正しくないかを判断する」ことで初めて「診断」といえる。そのように考えながら日々診療をしています。検査は重要ですが、あくまで所詮検査なのです。
まだしばらくは感染者数も多いことが続くと思いますが、引き続き感染対策を続けて、お体にお気をつけて日々をお過ごしください。
written by Dr Kubo2022.3.8